「ま、そう言う訳だ、観念しな」
「何を観念しろと?」
「とぼけるなよ?お前がここで何しようとしてたのか、ここの家主が帰ってくりゃあわかるからな」
私は溜め息をついた。どうやら本当に泥棒と思われているらしい。
しかし彼が警察なら当然の反応だろう。(やや早計な気もするが。)そして言動から察するに恐らく亘とは顔馴染みの人間なのだろう。
(奴め…私の事くらいきちんと説明しておけ)
いつ帰るのかもわからない亘に対し、私は心の中で悪態をついた。
「くそっ…あのガキ、さっさと帰って来やがれってんだ」
そう言って男は床に積まれた資料を足で蹴飛ばし崩壊させた。(誰が片付けると思っているんだ…!)
「警察の方、何を勘違いしているのかは知らんが、私は別に空き巣や不法侵入などではない」
取り敢えず(無駄だとは思うが)弁明をしようと言葉を紡ぐ。すると案の定、何を言ってやがると言った風な、片眉を上げたどや顔で見下ろしてくる。
見ればやや濃いめだが、中々精悍な顔つきをしている。
(好みではないな)
と、呑気に思ってみる。亘が帰ってくればこの状況も解決するのだ。これはそれまでの時間潰しである。
「大体よ」
すると、警察官の男は口を開いた。
「あの坊主が勝手に家に人を上がらせるなんて事有り得ねぇんだ、……昔っからな」
「………」
意味深な言葉であった。
そう言えば、私は亘自身の話をあまり聞かない気がする。探偵。無精。変人。それだけだ。おそらく及川もこれ以上は知らないのではないか。
この男は、そんな亘の過去を知っているのだろうか。知りたい。私は思ったのだ。
「……なあ」
「あん?」
「あなたは…亘さんの……」
そこまで口にした瞬間、ガチャリと扉が開いた。
「やっぱり!」
現れたのは及川だった。
「お父さん!!」
「何ッ!!!!!!?」
そして衝撃の第一声であった。
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