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「おっと…まさかこんなに早く会えるとはな」
「!」

 その声に、私は後ろを振り向いた。
 見覚えのある男が入り口に立っている。彼はたしか…

「……仁科」
「覚えててくれたんだな、嬉しいぜ?」

 そう言って仁科は当たり前のように亘とは逆の私の隣に座った。

「いつもの」
「はーい」

 眉間に深くシワを寄せた私に、亘は頭上に?マークを浮かべながら、知り合いかい?と尋ねた。

「…昼間っから飲んでるなんて、どうかしたか?ま、俺も人の事は言えねぇか」
「貴様には関係ない、とだけ言っておく」
「はは…相変わらずきついねぇ」

 仁科は笑いながらそう言うと、亘の姿を目に留め、尋ねてきた。

「あんたの友達かい?」
「………」

 関わらせたくない。直感的にそう思った。同時に私は、亘をこの場所に連れてきたことを後悔した。
 亘は片眉を上げて黙る私と仁科の顔を交互に見遣った。そして、何かを察したかのように表情を曇らせた。

「君の"お友達"かい」
「…亘さん」
「じゃあ、僕は帰るよ」

 亘はそう言って席を立った。

「お酒美味しかったよ、ありがとう」
「待て、亘さん、違う」

 そこまで言って、私はハッとした。

 "違う"

 不意に出た言葉に、私は眉間をしかめる。私は今、何を思った?
 いきなり口を閉ざした私に、亘は少し悲しそうな顔をして、店を出ていった。代金は私持ち、と言う点はちゃっかりしているが。

「…邪魔したみたいだな」
「……そうだな」

 確かに邪魔をされた。しかし、

「………お前が思っているような意味じゃない」

 調子が狂う。あの人の沈んだ表情を見ると。
 暗い瞳も、悲しそうな表情も、彼と会ってまだ数日しか立っていないのに、酷く似合わないと思ったのだ。だからここに連れてきた。ちょっとした気まぐれだったのだ。
なのに、

(何故、またあんな顔を、)

 去り際の彼のあの表情を、私は知っていた。過去、何度も見てきた。嫌になるほどに。

(皆、あの表情をして、私から離れていった)

 過去に出会った友人達は。

「………おい、どうした?」
「………」

 仁科が怪訝な顔をして私の顔を覗いている。また、嫌なことを思い出してしまったのだ。



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