第三章 探偵と助手の攻防

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 今になって思い浮かべる。
 奴の肌は意外にも白く、それはあの人を思い出させた。










 私はゲイだ。女ではなく男に性欲を覚える、そんな人間だ。
 夜、私は行き着けのゲイバーに足を運んでいた。

「あら、いらっしゃい」

 気さくに声をかけてくるこの店のマスターは私の大学時代からの親友だった。名は妃郁夫(きさきいくお)。

「ちょっと、私のことは源氏名で呼ぶか、ママって呼んでって言ってるでしょ?」
「知らん、いつものを頼む」

 はいはい…と言って棚から瓶とグラスを取り出す。ちなみに、こいつはオカマだ。声も高いし一見女性にしか見えないが、よく見れば喉仏がある。だが、いくら女装をして厚化粧をしようとも、私にとっては男の友人だ。

「相変わらずお固いのねぇ…はい」
「む」

 カウンターにグラスを置かれ、私はそれに口を付けた。ここに来ると必ず飲む酒だ。

「心配したのよ?事件に巻き込まれたって聞いてから全然来ないから」
「…色々あってな」
「ふぅん…じゃあ今日になって来たのも、何かあったから?」

 私はグラスをカウンターに置いた。

「………ヘテロに手を出した」
「…て、え!?ちょっと!どういうことよそれ!?」
「言葉通りの意味だ」

 なぜあんなことをしたのかは、正直自分でもわからないのだ。

「……誠二、私ね」

 妃は私の肩に手を置いた。

「ずっと心配なのよ、…私、あなたに会ってからあなたが固定の相手と付き合ってる所見たことない、いつも一夜限りの相手ばかり…」
「…言っておくが、それでヘテロに手を出したと言う訳じゃないからな」

 妃はふぅ、と溜め息をつく。

「じゃあどういう理由よ」
「向こうが誘った、あと、腹がたった」

 どちらも本当のことだったが、それだけではヘテロに手を出す理由にはならない気もした。私は再びグラスを傾ける。

「どうしちゃったのよ、もう…」

 すると、バーの扉が開き1人の男性が入ってきた。男はこちらを見ると、そのまままっすぐ歩み寄り私の隣に座った。

「ママ、いつもの頼むよ」
「ええ」
「………」

 私は大して気にせず前を向いていたが、隣に座った男はさも当然のように私に肩を寄せてきた。



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