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「だが1つ気になる点がある」

 コツン、男は机を指で叩いた。

「僕はたとえ1つでも疑問の余地を許さない」
「………」
「本来僕がわざわざ留置所へ足を運ぶことなどないのだが、この疑問を晴らすには君の証言が必要だと思ってね」
「その疑問とは、何なんですか」
「それは言えない、君が犯人だったら困るからね」
「………」

 私は机に目を落とした。



 事件は昨日の夜、午後9:20に起きた。警察の元へ、銃を発砲する音が聞こえた、と通報が入った。現場へ到着すると、そこには死体と、銃を持って立ちすくむ1人の男がいた。警察は直ちにその男を現行犯逮捕したのだ。

「それが、君だ」
「………」
「君…生王君と言ったか、変わった名前だ、言っておくが僕は殺人の動機には興味がない」

 何があったか話してくれるかい。男は言った。
 昨夜の出来事、警察の取り調べで何度も蒸し返された、思い出したくもない記憶。

「…わかりました」

 私は口を開いた。





 昨夜、午後9:00だった。私は仕事を終え、会社から出た。すると、ビルの正面入口に見知った顔を見た。

『…よお』


「それは誰だったんだい?」
「………」
「…生王君?」
「…友人です、古い…」


『思ったより早かったな、残業はしない主義か?』
『…そこをどいてもらえるだろうか』
『くく…相変わらず冷たいねえ』

 私は男を無視し、通し過ぎようとしたが、男に腕を掴まれてしまった。

『…っ!』
『まあ待てって…久々の再会なんだ、ゆっくり話でもしようぜ?』
『何が再会だ…!どうせ尾けて来たのだろうが!』

 私は腕を振り払おうと試みたが、男の腕はそれを許さなかった。

『誠二…お前にしたことは悪かったって思ってる、謝りに来たんだ』
『出鱈目を…っ』
『本当さ、覚えてるか、あの公園、あそこで話そう、…頼む』
『………』

「それで、行ったのかい」
「…ええ」

 公園に着くと、男は突然私に掴み掛かってきた。

『な!何を…っ』
『何が謝りに来た、だ…腹立ってんのはこっちなんだよ…!!』
『ぐ…っ』

 首元を強く絞められ、私は男を突き飛ばした。その反動で男の体は地面に倒れた。

『てめぇ…っ』
『!』

 男は、懐から拳銃を取り出した。

『な…なぜそんなものを…』
『るせぇっ!!』

 男は銃を構え、私の方へ向けた。私は男がハンマーを下ろす前に男へ飛び掛かり銃の筒を掴んだ。




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